sage de cret

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2010.08.20

Fall-Winter 2010 Part1

ディレクター千田へのインタビューを通して、ブランドの背景や物作りの秘密を紐解くコーナー「・・・」。今回は2010A/Wコレクションのバックグラウンドに迫ります。


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《アメリカ》

──いよいよ秋物も本格スタートですね。A/Wについては前々回にも少し話を伺いましたが、もう少し掘り下げていきたいと思います。

千田(以下C):今季のテーマが「アメリカ×ヨーロッパ」、アメリカの匂いを持った素材やモチーフを、ヨーロッパの視点を通したアイテムにという目線がメインとなっています。
中心となるアイテムが、前々回話した「マッカーサーシリーズ」です。
そしてそれと並んで好評だったのが、「リーフカモシリーズ」です。
中米キューバ軍で現行で使用されているリーフカモフラージュプリント素材を用いたシリーズです。


《素材との出会い》

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──キューバ軍なんて珍しいですね。

C:あまりメジャーではないです。
アメリカ×ヨーロッパのテーマで企画を進めていた中、素材ではマッカーサーがひとつ案として挙がっていましたが、それとは別に、柄でもテーマを形にするため色々なものを探していました。
一方同じタイミングで、Beams+ からカモフラージュ柄でうちの定番人気の7分丈ミリタリーパンツを、という別注リクエストをもらいました。
それで色々とカモフラージュ柄を探していた中、生地屋がストックしていたこの素材と出会い、あまりの衝撃にすぐに押さえて企画を進めました。

──A/Wのテーマにも、Beams+ のリクエストにもハマる出会いですね。

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C:製品にする前の、元のプリントを見てもらうとわかりますが、衝撃的な蛍光色を使った配色と、エコ感も感じさせるリーフの柄行きが一発で気に入りました。
Beams+ では7分丈ミリタリーパンツのデザインでスミクロで染めたものとカーキで染めたものの2色を展開、今年5月に行われた受注会のみでの完全限定の受注販売を行いました。

──元々人気のデザインにこの素材が掛け合わされている訳ですから、それこそ鉄板アイテムですね。

C:うれしいことに記録的な数のオーダーをいただきました。


《sage de cret のカモフラージュ》

──これまで sage de cret でカモフラージュプリントを扱うことはなかなかないですよね。

C:某セレクトショップの別注でタイガーカモを扱ったり、サンプルで以前にも話したミッキーカモなんてのはありましたが、オリジナルのラインで製品化するのは初めてです。
カモ柄は、そのままだと見た目のインパクトの強さから、どうしてもオリジナル性に欠けてしまい、大人が楽しむにも抵抗が出てしまいます。
その点、このリーフカモは自然な柄行きであること、さらにスミクロでオーバーダイ、製品染めをかけているため、印象もずいぶん違って仕上がっています。
オリジナルラインではスミクロのみの1色展開です。

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──染める前のプリントと比較すると、もう別物ですね。

C:オーバーダイにより、パッと見の印象は無地の様でありながら、下地のカモ柄でマチエル状の深みが出て、sage de cret らしい風合いに仕上がっています。


《クラシック×ミリタリー》

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──ブランドオリジナルのA/Wラインでは、この柄で3アイテム展開していますね。ジャケット、コート、パンツ

C:一番面白かったのはトレンチコートです。
他の2アイテムに比べて、トレンチはミリタリー色が弱いアイテムです。
もちろん、トレンチコートも第一次大戦時には軍服として将校などが着用していた歴史があり、このコートのデザインもイギリス軍のヴィンテージものをベースとしてます。
でも一般的にはクラシックなドレスの印象の方が強いデザインです。
元々、古いヨーロッパの軍服は、テーラードから派生した背景もあります。
今回はこれをあえてミリタリーとぶつけています。
ショートジャケットはフランス軍F-1モデルがモチーフ、パンツはこの秋からのニューモデルでいつもよりやや細身のきれいなシルエットに仕上げています。

──こちらもものすごい反響でしたね。

C:BEYES でも反応が本当にすごかったようで、発売するなり数時間での完売でした。
もちろんうちのオンラインストア LE PILOTAGE でもあっという間でした。
各方面から追加オーダーのリクエストをいただいたのですが、希少な生地のため初回生産のみで一旦販売終了となりました。
ただ、要望があまりに多かったので、次期2011S/Sに向け新たに生地の準備に入っています。
この素材で、この秋のマッカーサーシリーズのジャケットとヘリクルーパンツ、カーゴパンツ、5部丈カーゴパンツの4デザインを予定しています。

──豪華ラインナップですね!

C:楽しみにしていてください。

──話が戻りますが、BEYES では「マンスリーサージュデクレ」の企画で紹介されていたのも大きかったみたいですね。

C:「マンスリーサージュデクレ」は、S/Sの6回連続企画での好評を受けて、A/Wでも第2弾として再びスタートとなりました。
今回は毎月トップスとボトムを各1アイテムずつ毎月ピックアップです。

──個人的には9月予定のヴィンテージフラノ・カーゴパンツが今から楽しみです。


《アメリカ×ヨーロッパ》

──これまでにない「アメリカ」という新しい要素を、sage de cret の得意とするヨーロッパのベースにぶつけたわけですが、何かこれまでにない新しい発見なんてありましたか。

C:アメリカもヨーロッパも元は一緒なんだということは改めて感じました。

──アメリカの文化も、ものすごく元をたどっていくとヨーロッパから渡った文化が進化していった背景がありますよね。

C:でも、そのアメリカに渡ってからの進化が革命的で、機能性を重視して、素材にしてもデザインにしても一気に一線を越えました。
M-51やモッズコートがまさにそれです。
これはヨーロッパにしてもアメリカにしても言えることですが、どちらも生地やデザインなど、元の形がしっかりしています。
元がそれぞれしっかりしているからこそ、異なる要素をぶつけるのはすごく面白いです。

──反対にぶつけてみて違和感みたいなものだったり、難しい部分などもあるのでしょうか。

C:どうでしょう、そんなには思い当たらないですね。
異なる要素をひとつの企画として組み上げていく、最初の方向性をきめていく部分かな。
例えばマッカーサーが着用していた軍服の素材、ウエストポイント10000番で、本当にマッカーサーが着ていたデザインを作るのか、それとも別のテーマ、デザインのアイテムにするのか、そういった部分では今回に限らず検討を重ねていきますが、それを決めてしまえばあとはもう一気に動き出します。


《パッカリング》

──マッカーサーやリーフカモ以外にも今季注目のアイテムがまだまだありますよね。毎回好評のパンツですが、今季のニューモデルもとても気になります。

C:今回注目の新型2型はストレートパンとカーゴパンツです。
40/2強撚ウエポン素材を使用しています。

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C:ストレートパンツはやや裾をテイパードに仕上げています。
ポイントはサイドの前身と後ろ身を合わせた縫製部分です。

──パッカリング、シワの出方が特徴的ですね。

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C:このパッカリングの秘密は裏側にあります。
裾を返してみるとわかりますが、脇の縫製部分の前身、後ろ身の生地の端の縫い代部分、ここを通常は生地がほつれないようにロックミシンで糸をかがって処理をしますが、今回はスレキでパイピングにしています。

──テープ状の生地でパンツ内側の縫い代を挟み込んで生地の端がほつれないように...。

C:そうです。
そこでパイピングに使う生地のチョイスを、パンツ自体の生地と縮率の違うものにしています。
この組み合わせで縫い上げてから製品染めをかけると、身頃の生地とパイピングの生地で縮み方が違うため、表から見たとき脇の縫製部分に特徴的なシワが生まれます。

──すごく手が込んでいますね。

C:狭い部分に集中してパッカリングが出ます。

──この部分のステッチが表側には即章のような見え方をしているのも面白いですね。

C:縫い代を開くことでこのステッチラインが生まれてきています。
さらに、このパイピングはクロップド丈で楽しみたい時には、ロールアップ部分に見えてアクセントにもなってくれます。


《2種類の異なる軍パンを》

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C:カーゴパンツの方は、2種類の異なるヨーロッパの軍パンを組み合わせてデザインし直しています。
股上と股下がもともとカテゴリの異なる別のデザインをベースにしています。

──違和感がない、言われないとまったく気づきませんでした。異なる要素を組み合わせてリアルに見せる、sage de cret ならではのデザインですね。

C:ビンテージ感を持たせるためにいつものドットボタンではなく木の実のナットボタンを使っていることでまとまりが出ていることもありますし、ただ2つのデザインをくっつけた訳ではなく、ポケットやステッチなどのバランスを調整しています。

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──ウエストの内側に付いているこの紐は何ですか。

C:サスペンダーをつけるためのものです。

──昔のサスペンダーは、確かに思い返してみるとこうなっていますね。この紐は身頃側に縫い付けられていたんですね。

C:これをサスペンダーで挟み込んで吊ります。

──紐の端が切りっぱなしになっていたり、こういう着用時には見えない部分に手が込んでいるのはうれしくなります。

C:実用目的と言うよりは、ビンテージ感を楽しむためのちょっとした遊びです。


《対比から生まれる印象》

C:今回脇のパッチポケットはマチのないデザインにしていますので、ステッチを2重にし、間隔を広くとることで貧弱にならないようアクセントにしています。

──ポケットのラインに丸みを持たせているためなのか、ステッチの間隔が要因なのか、僕はこのポケットのバランス感がすごく好きなんです。

C:脇のパッチポケットの袋の部分はラインに丸みを持たせていますが、フラップ側は直線的なラインで端から3mmのステッチでシャープな印象を持たせています。
前身のポケットも同じ仕様なので、その対比から生まれる印象かもしれません。

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──コインポケットもまた違った仕様でアクセントになっていますね。

C:ここの玉縁はシャープな印象を持たせるためにすごく細くしています。
ここまですると手でしか縫えないので、機械による量産を前提としたアメリカでは見られないデザインで、ヨーロッパらしさの現れた部分です。

こうして仕様を変えて強弱をつけることでデザインに動きや流れができます。
マッカーサーシリーズのジャケットでも、右胸のフラップにだけ曲線を用いることで、全体に動きを与えています。
仕様に変化をつけることで、奥行きや深みのある印象になります。
身に着けてみた時にどんな印象に見えるのか、やり過ぎるとうるさくなるし、シンプルにし過ぎると物足りない、いつもの話ですが、そのサジ加減がデザインをしていく上でのポイントですし、面白みですね。



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About〈・・・〉

ディレクター・千田仁寿が、〈CHENTO OTTO〉〈DEZART〉を経て2001年より始めた。
〈サージュデクレ〉とは、「賢明な」を意味する仏語の「sage(サージュ)」と「布告」という意味の「decret(デクレ)」を掛け合わせた造語。
ステッチやジッパー、ラインやフォルム、染めや素材、縫製に至る細部にまで、一枚の洋服における様々な役割について、考え抜かれたワードローブを提案している。
また、ブランドの基本概念としてワーク、ミリタリー、トラディショナルこそメンズウエアのベースであると主張。洋服の歴史的な背景や伝統は重んじながらも、既成概念に捕われ過ぎないデザインと、洗練されたギミックを上手く表現している。
そのため、高いファッション性を備えながら、どこかリアリティを感じさせるブランドに仕上がっている。ここ「・・・」では千田の声を通してブランドの世界を紹介します。