sage de cret

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2010.05.31

Exhibition

ディレクター千田へのインタビューを通して、ブランドの背景や物作りの秘密に迫るコーナー「・・・」。今回は通常の展示会とは異なる形で2010A/Wコレクションが紹介された2つのイベントについて話を聞きます。


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《外に出てどんな評価をもらえるのか》

──2010A/W展示会もひと段落ですね、お疲れさまでした。今回の秋のコレクションは、いつもの社内展とは違った形での発表となりましたね。

千田(以下C):そうですね、今回の秋のコレクションは自社のショールームで定期開催している展示会に先駆けて、国内最大クラスの合同展示会"rooms"で、第1弾の発表をしました。

──これまでにもありましたか。

C:合同展への出展は今回が初めてです。

──どんな経緯だったのでしょう。

C:以前からずっと興味を持っていたんです。
国内でも色々な合同展示会があり足を運んでいました。
そんな中でroomsは今年でちょうど10年目、運営するH.P.FRANCEとしても節目の年として力を入れて行こうということの一環で、うちにもオファーをいただいたのが切っ掛けです。
僕らのブランドもスタートしてもうすぐ10年、外に出てどんな評価をもらえるのか見てみたかったし、より多くの方にブランドの存在を知ってもらいたいという思いがありました。
出展は、クリエイティビティの高いブランドの集まった"Gold"というブロックでオファーをもらい、良い形でブランドをプレゼンテーションできる環境でした。


《見せたいアイテムから作る》

──いつもの自社で行う展次会とは違いますか。

C:だいぶ、色々と違いました。
裏側の話になっちゃうけど、まずいつもとスケジューリングが全然違う。
出展を決めたタイミングの問題もあって、通常の社内展進行よりも3ヶ月前倒しで秋物に着手して、しかも準備に使える日数も限られていたのでずいぶんタイトでした。

──あの頃、サージュデクレのスタッフは本当に皆キツそうでしたよね。

C:あのキツさは、あれはあれで嫌いではないですけどね。
いつもだとひとつのアイテムに対して、セカンドサンプルまで作って発表することが多いのですが、この時はファーストサンプル一発でイメージ通りに仕上げて行く必要があり苦労しました。
ただ、社内展に比べると展示できるスペースも限られてくるので、発表できるアイテムの点数も40点前後にしぼられ、イメージや世界観を先行したいわゆる「見せたい」アイテムから優先的に作れたので、実際の企画、デザイン自体はスムーズで時間はかかりませんでした。

──会場での反応はいかがでしたか。

C:世の中から僕らのブランドに対する評価を見てみたいという側面もあった出展ですが、予想を上回る評価をいただけました。

──ネット上でも色んな色んな形で紹介されていましたね。

C:中でもかっこいい文章で紹介していただいたのが、某有名セレクトショップをいくつも手がけた山下裕文さんのブログ。 
今回始めての合同展への出展でしたが、こうした声をいただけたり、新しい出会いも多く、今後につなげていきたい機会でした。



《マッカーサー》

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──アイテムそれぞれに対しての評価はいかがでしたか。

C:反応が一番大きかったのが、今回のコレクションの軸となる「マッカーサー」シリーズです。
第二次大戦後GHQ最高司令官として来日したダグラス・マッカーサーが身につけていたベージュの軍服、誰でも何となく教科書やテレビで見かけたことがあると思いますが、あの軍服の復刻素材を使ったシリーズを今季2010秋コレクションでのメインとして展開しました。

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──マッカーサーが着ていた軍服の素材を用いて、デザインはサージュデクレのアイテムを作っているんですよね。

そうです、オリジナルで3アイテムを展開しています。
しっとりとした光沢が美しく、それでいて丈夫。
軍用も含めたワーキングウェア素材の中でも最高級に位置する「ウェストポイント10000番」と呼ばれる綾織の素材です。
ちょうどrooms出展が決まった頃に生地メーカーから、この生地を復刻の話を聞き、すぐにうちで押さえたところからスタートしました。
素材の元となる綿の選定の段階から力織機まで研究に研究を重ねて作られた、米軍規格の承認を受けた最高級素材です。
ところが今回、スケジュールの関係からデザインを起こす段階では実際の素材が間に合わず、このシリーズは生地を見ないままデザイン、企画を進めました。

──そんなことが可能なんですか。

C:イメージはできますし、写真などを手がかりにして進めました。
初めて素材に触れたのは、展示するためのサンプルが仕上がったタイミング、rooms展の直前でした。
でも、ちゃんとイメージどおりに満足のいく物に仕上がってきてくれています。



《アメリカ×ヨーロッパ》

C:これだけ良い素材を使って服を作れるということで、いったい何を作るか、嬉しい悩みもありました。
今回の新しい要素としては、これがアメリカの素材であることが挙げられます。

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──サージュデクレで「アメリカ」は珍しいですよね。

C:基本的にサージュデクレはヨーロッパのワーク/ミリタリー/トラディショナルがベースとなっています。
今回このアメリカという要素をヨーロッパとどう掛け合わせてデザインをするのか。
これは2010A/Wコレクション全体のテーマにもつながっていったのですが、デザインを起こしていく作業がすごく面白かった。
それに、着用を重ねていくうちに生地の表情がどう変化していくのかも想像してみるとすごく楽しみな要素です。
実際の生地を触っていないという条件も重なり、イマジネーションをすごく刺激される規格作業で、新しい物作りの進め方の発見でもありました。
最終的にサファリジャケット、ステンカラーコート、クラシックパンツ、この3デザインで展開しています。



《ウェポンとチノ》

──初歩的なことですが、この2タックのクラシックパンツは、いわゆるチノパンとは違う物なんですか。

C:基本的には同じ形を指す言葉なのですが、素材の歴史を振り返ってみるとこれが面白いんです。
ウェストポイント素材、略してウェポン、この素材名から一般的には打ち込みのしっかりとした、ハリ、コシの強い素材をイメージしがちですが、これは高速織機による大量生産の技術が進歩したことによって生まれた特徴であって、1940年代当時のウェストポイントで作られていたワーキングウェア素材はそこまで打ち込みの強い物ではなかった。
当時のウェストポイント素材で作られていたクラシックパンツが、高度成長に伴い中国で大量生産されるようになり、「China」からチノパンと呼ばれるようになった経緯があります。

──ウェポンが先でチノが後なんですね。それにしてもこれだけ上質な素材となると、ナマっぽい話ですがコストもそれなりに上がってきますよね。

C:うちのアイテムは、普段の素材も決して安いものではないですが、今回のマッカーサーは比較にならないコストです。
しかも、生産を依頼する工場も吟味して選んでいます。
マッカーサーシリーズは商品のプライスも通常のアイテムよりあがっていますが、ここだけの話、メーカーとしては元が取れていません。

──つまり買い手からすると、コストパフォーマンスの高いアイテムですね。

C:本当にそうです。
まあ、プライスはさておき、roomsでもこのシリーズに対しての注目すごく高く、評価の声をたくさんいただけました。



《毎年心待ちにしている》

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──Beams+での受注会ではどうでしたか。

C:ここでもマッカーサーがものすごく反応がよくて、自分たちでは当然キーになるアイテムですから注目していますが、予想を上回る反応に驚かされました。

──roomsがビジネスを前提としたプロの方に対しての展示会なのに対して、Beams+の受注会は一般の個々のお客様に対してのイベントですから、そこでの声というのはすごくリアルなものですよね。

C:実際に注文をいただく場ですから、リアルに結果が見えてきます。
決してお手軽なプライスではないにも拘らず、最終的にはこのシリーズの受注がナンバーワンでした。

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──年に一度、東京と大阪でのこのイベントは、お客様からすると全コレクションを見ることのできるめったにないチャンスですよね。

C:僕にとってはお客様と直に接し、声を直接いただける貴重な機会でもあります。
なるべく会場に立てるようにしているのですが、beams+受注会も今年で6回目となり、東京、大阪ともに毎年足を運んでいただけるお客様が年々増えていて、僕としても心待ちにしているイベントです。
そこでマッカーサーシリーズが、Beamsのホームページでも事前に紹介をしてもらっていたこともあり、ちゃんと評価をもらえたというのは、作り手としてうれしい結果です。



《キューバカモ》

──マッカーサー以外の反応はどうでしたか。

C:マッカーサーの次に人気だったのは8月、秋の立ち上がりに登場のキューバカモシリーズです。

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──これも楽しみなアイテムですよね。

C:キューバ軍のリーフカモフラージュプリントの素材を用いて製品にし、でき上がったアイテムをさらにスミクロに染め上げています。

──遠目にはブラック無地に見えながら、よく見るとカモフラージュ柄が見えてくる奥行きのある色味がいいですよね。ネット担当としては写真に撮った時に柄が写り辛く、魅力を伝えるための難易度が高いチャレンジングなアイテムです。他はどうでしたか。

C:いつもどおりパンツは多くのお客様に評価をいただけます。
それとアウター、ジャケット類の人気が年々高まっています。
パンツに比べると全国でも取扱量がそこまで多くないこともあり、こういうコレクションを丸ごと揃えた受注会でないと一般のお客様が買えるチャンスが少ないこともありますし。
Beamsのスタッフから聞いた話でも、アウター、ジャケット類の取り扱いをもっと増やして欲しいというお客様の声が多いみたいです。

──秋のコレクションも楽しみなアイテムがたっぷり待っていますし、その辺はまたじっくり話を聞かせていただきます。



《ダイレクトに》

──どちらも社外でのコレクションの発表の場であるroomsとBeams+受注会ですが、違いはありますか。

C:やっぱり来場者の立場の違いから、リアクションの見え方が違いますね。
同じ評価の声をいただくのでも、roomsはプロの方がビジネスを前提としていますから表現がクールですし、好き嫌いとはまた違う視点からいただく声も多いです。
一方Beams+受注会だと一般のお客様ですから、その個人個人の思いがダイレクトに伝わってきます。
びっくりするくらいシンプルでストレートな質問をたくさんもらい、僕もストレートに答えます。
あとは、期間中Beamsの販売スタッフもどんどん質問をぶつけてきてくれます。
いずれも自分にとってはすごく刺激になることばかりで大切な時間です。
この場を借りて、来場してくださった多くのお客様や関係者の方、それからrooms並びにbeamsのスタッフの方々にお礼を申し上げさせていただきます。



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About〈・・・〉

ディレクター・千田仁寿が、〈CHENTO OTTO〉〈DEZART〉を経て2001年より始めた。
〈サージュデクレ〉とは、「賢明な」を意味する仏語の「sage(サージュ)」と「布告」という意味の「decret(デクレ)」を掛け合わせた造語。
ステッチやジッパー、ラインやフォルム、染めや素材、縫製に至る細部にまで、一枚の洋服における様々な役割について、考え抜かれたワードローブを提案している。
また、ブランドの基本概念としてワーク、ミリタリー、トラディショナルこそメンズウエアのベースであると主張。洋服の歴史的な背景や伝統は重んじながらも、既成概念に捕われ過ぎないデザインと、洗練されたギミックを上手く表現している。
そのため、高いファッション性を備えながら、どこかリアリティを感じさせるブランドに仕上がっている。ここ「・・・」では千田の声を通してブランドの世界を紹介します。