sage de cret

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2009.09.24

Fall-Winter 2009 Part2

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ブランドの背景にスポットを当て、ものづくりの秘密に迫る「・・・」。
前回に引き続き2009A/Wシーズンについて話を聞きます。


《伝統的なもの、オリジナルなデザインを大切にしながら》

──今回は2009A/Wコレクションのデザインを中心に話を伺います。

千田(以下C):今回のデザインは比較的スタンダードなものにしています。
伝統的なもの、オリジナルなデザインを大切にしながら、 sage de cret らしくモディファイしています。

今シーズンのテーマが「風化するように」ということで、急に変化したようなものでなく、自然な時間の経過の中で少しずつ形が変わっていきたような風合いを出すために素材作りから取り組んだという話しを前回しました。
デザインでも同じように、オリジナルのモチーフから極端に変えたり、急にとって着けたようなものでなく、ミリタリーならミリタリー、ワークならワークらしさを大事にしながら、少しずつ変化させミックスさせたものになっています。


《ルーツが違えばデザインも異なる》

──具体的にアイテムごとにお話を伺えますか

C:まず、今シーズンを代表するアイテムのひとつが、このラバーコーティング仕様のモーターサイクルシリーズです。

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C:今シーズンの新しいモチーフとして、モーターサイクルのジャケットとコートを作りました。
これまでバイク乗りのアイテムは、ずっとライダースジャケット一辺倒で作ってきましたが、今回は新型です。

──同じバイク乗りのアイテムでもデザインがまったく違いますよね。

C:ルーツが違えば、それを着る人の乗るバイクのタイプも違うため、アイテムのデザインも異なります。
「風化するように」というテーマから、ビンテージ感のあるモチーフとして今回このデザインを取り上げました。

他にはゴートスキンを使ったレザージャケットシリーズも、今季らしいアイテムになります。

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C:この2つはそれぞれポリスマンジャケットとバイカーズジャケットがモチーフとなっています。

──これもバイク乗りのアイテムですね。

C:そうですね。
同じバイク乗り用のデザインでも、最初に話したモーターサイクル、それからこのポリスマン、それぞれライダースタイプとデザインが形づくられてきたルーツが異なるので、デザインも全然違い違います。
袖の付け方一つとっても、いわゆるライダースタイプは前屈みでバイクに乗る上で最も機能的なように作られるため、袖が前身に振られていてフロントを閉じて普通に姿勢を正すと胸元が窮屈になります。
モーターサイクルジャケットは元をたどっていくと乗馬のためのアイテムで、前のめりにならず、機能面だけで考えれば日常の着用においては着やすい形です。

──こうして話を伺いながらデザインを見ていると、ずっとバイクに乗ってきた千田さんならではのこだわりが強く感じられますね。A/Wの話を伺っていたのに、ついついバイクウェアの話に夢中になってしまいます。そのうちバイクをテーマにまたじっくりお話を聞かせてください。

C:是非やりましょう。


《風化するように》

C:コレクション全体に話を戻しますと、最初にも言いましたが、デザインが主張しすぎないのが今季の特徴になります。
風化して形が変わっていくというのは、言い換えてみると、変化が急ではないということで、そういったものは飽きがこない、つまりは長く着られるデザインを目指しました。
でも、だからといって、まったく変化させない、まんま同じデザインでもありません。
オリジナルのデザインモチーフが誕生してから現在までに経過してきた時代の流れの中で、少しずつデザインが変化してきて、それがうちのブランドの解釈としてデザインに現れています。


《異なる素材を組み合わせることで深みを持たせる》

──A/Wとなるとアイテム自体にボリューム感も出てきますよね。

C:A/Wのアイテムには裏地をつけることができるのも大きな特徴ですね。
裏地は、字で書いた通り「裏につける生地」ですから、基本的には直接表側からは見えません。
でも裏地自体が見えなくても、見た目に奥行きが自然と出ます。
裏があることで表の見え方が重厚になり、表側に肉感として現れてきます。
商品自体に深みを持たせられます。
そもそも、この季節のアイテムで裏地がないと見た目に寒々しく感じてしまいますし。

──その裏地に使う素材のチョイスもポイントになりますよね。

C:パッと見には見えない部分ですが、裏地のチョイスでアイテムの雰囲気は変わってきます。
基本的には表地とは異なる素材を使います。
コットンの表地にキュプラの裏地だったり、ウールの表地にコットンの裏地をといったように、異なる素材を組み合わせることで商品に深みを持たせています。

──ブランドスタート時に掲げられたコンセプトにもある部分ですね。異なる要素をバランスよく合わせることで生まれてくる世界観。

C:また最初に話したモーターサイクルモチーフのジャケットとコートに話が戻りますが、このアイテムは表地のラバーコーティグ仕様のコットン素材に対し、ライナーにはウールを使っています。
これがもし裏にナイロンを使うと、全体の印象がずっとカジュアルになってしまう。
裏地の選択は見えにくい部分ですがすごく重要になります。

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《本来は洗わないで着続ける》

──このアイテムは表地もすごく面白いですよね。

C:このジャケットのオリジナルモチーフとなる本来のバブアータイプジャケットは、屋外での防風のために表地にミンクオイルでコーティングが施されています。
それを着用していく中で、汚れがオイルと馴染んでいってはじめて防風の機能を果たしてくれます。
だから本来は洗わないで着続けるものなのですが、日本でそれをやると臭いも出てしまい、それこそ電車にも乗れなくなってしまうので、メーカーと色々と試行錯誤してできあがったのがこの生地です。
実際にはオイルではなくラバー素材でコーティングして本来の雰囲気を残しながら、軽くキレイで、防風の機能性も兼ね備えています。

この生地を使ったシリーズでこれまでいくつかアイテムを作ってきたのですが、作った生地のストックが終わりになるので、この生地を使用したシリーズはこのジャケットとコートで最後になります。

──ここで逃したら終わりですね。

C:僕としても思い入れの強い素材の一つです。

──このジャケットは、袖部分の裏地はまた別の素材になっていますね。

C:袖の通りがいいようにキュプラを使っています。
機能性と言ったら大げさかな、でも実際に着た時の感覚は全然違ってきますよ。

──表地のコーティングや袖の裏地にしても、オリジナルの雰囲気をしっかりと残しながら、機能的なアイテムであるため、隅々まで考えられていますね。

C:古くからあるスタンダードなデザインをモチーフとした時、そのオリジナルのデザインや素材は当時の時代や環境、条件の中で生まれてきたもので、機能面だけで言えば今ではもっとずっと高機能の素材で代用できてしまいます。
防風や防水だったり、保温性、耐久性など。
ただ、高機能だからという理由だけで今の時代の素材に置き換えてしまうと、その中でオリジナルの雰囲気も一緒に失ってしまいかねません。
本来の雰囲気や風合いは失われないように最新の注意を払います。


《風化と進化のバランス》

C:クラシックなアイテムには、自然な流れの中で風化しながらも存在感を増す建造物のような独特な空気感があります。
それを今の時代の中で着ることを考えた時、「風化」しただけじゃない、プラスαの部分が必要です。
今の時代の中で着られることを考え、機能的な面での新しい素材の使用や、もっとデザイン的な部分でのちょっとした遊びなど、意識的に「進化」させた部分がプラスされて初めて sage de cret のデザインになる。
自然な「風化」と、意識的な「進化」のバランスとでも言ったらいいのかな。

A/Wのアイテムでは「暖かさ」が無視できないポイントですが、昔の服は暖かさを求めるとどうしても重くなってしまいます。
重さはそのアイテムの存在感というプラスの要素にもつながりますが、機能的には歓迎されるものではないですよね。
さらに、今の日本国内だけで考えれば、そこまで完璧な防寒機能も求められてはいない。

僕らが作ろうとしているのは、心地よく着られて暖かい、そしてオリジナルデザインの存在感を持っている、そんなアイテムになります。
デザインをしていく上で一番大事なところがこれらの要素の加減、「風化」と「進化」のバランスで、それが最も難しくもあり同時に最も面白い部分でもあります。



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About〈・・・〉

ディレクター・千田仁寿が、〈CHENTO OTTO〉〈DEZART〉を経て2001年より始めた。
〈サージュデクレ〉とは、「賢明な」を意味する仏語の「sage(サージュ)」と「布告」という意味の「decret(デクレ)」を掛け合わせた造語。
ステッチやジッパー、ラインやフォルム、染めや素材、縫製に至る細部にまで、一枚の洋服における様々な役割について、考え抜かれたワードローブを提案している。
また、ブランドの基本概念としてワーク、ミリタリー、トラディショナルこそメンズウエアのベースであると主張。洋服の歴史的な背景や伝統は重んじながらも、既成概念に捕われ過ぎないデザインと、洗練されたギミックを上手く表現している。
そのため、高いファッション性を備えながら、どこかリアリティを感じさせるブランドに仕上がっている。ここ「・・・」では千田の声を通してブランドの世界を紹介します。